前田裕│アヴァンダ株式会社 代表取締役社長

現在の暗号技術は量子コンピュータの実用化により無力になる。その問題を解決する「完全暗号」の知識やサービスの普及に努める。ソニー株式会社で培った要件分析などの経験とビジネススクールで身につけたMBA知識を次世代のセキュリティで活かす。

プロフィール


氏名前田 裕(まえだ ひろし)
生年月日1966年2月4日
出身地熊本県熊本市
所属/役職アヴァンダ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人情報セキュリティ研究所 事務局長
サイファ・コア株式会社 執行役員 商品部長
経歴1989年3月 茨城大学工学部電気工学科 卒業
1991年3月 茨城大学大学院工学研究科 修了
1991年4月 ソニー株式会社
2015年5月 アヴァンダ株式会社 創業 代表取締役に就任 (現職)
2017年3月 グロービス経営大学院大学経営研究科 修了
2020年9月 一般社団法人情報セキュリティ研究所 事務局長に就任 (現職)
2022年7月 サイファ・コア株式会社 執行役員商品部長に就任 (現職)
運営サイトアヴァンダ株式会社(会社ホームページ)https://avanda.co.jp
一般社団法人情報セキュリティ研究所 https://ri-is.org/
サイファ・コア株式会社 https://cipher-core.co.jp/
SNS
メディア実績日本ネット経済新聞(2015年10月)

 

事業内容


解決している社会課題

  • 量子コンピュータ時代に備える「完全暗号」の普及
    現在、インターネットなどの各種サービスで広く使われている暗号技術は、量子コンピュータの実用化とともに一瞬で破られてしまう危険性があり、完全暗号の導入が必須となっている。量子コンピュータの実用化はそう遠くない未来のため、今のうちから対策を講じることの必要性を伝えるとともに、関連サービスや研修を通して完全暗号の普及に努めている。

提供している商品・サービス

  • 一般社団法人情報セキュリティ研究所 https://ri-is.org/
    完全暗号の開発者と共に完全暗号の普及を目的とした研究所。衆議院会館での国会議員向けの勉強会をはじめ、必要とされる組織・企業に情報が届くための活動を行っている。
  • サイファ・コア株式会社 https://cipher-core.co.jp/
    完全暗号の技術をサービス化して導入しやすい形で提供。現在提供している完全暗号を使用した秘匿性の高いメッセンジャーサービス以外にも、コンピュータ間での情報共有、オンライン契約、本人確認・認証システム、PCでのファイル管理、現金管理・海外送金、などのサービス提供を予定。

実績

  • 23年間のソニーでの最先端の開発設計
    ソニー株式会社では、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、ハードディスクレコーダーなど同社を代表する最先端の製品群の開発に携わり、組み込みソフトウェアエンジニアとして中核的な役割を担う。
  • サイファ・コア株式会社では500名以上の研修実施実績
    リスキリングとして量子コンピュータを見据えた情報セキュリティ研修を複数社に対して実施。受講者数は累計500名を超えている。

 

インタビュー


事業を始めたきっかけ

私はソニー株式会社に長年勤め、50歳を目前にした48歳のときに退職しました。ビジネス規模も大きく部下もいてやりがいもありましたが、もっとお客様の反応を間近で感じられる環境で、自分のアイデアをすぐに形にできるようなビジネスがしたい、という思いが強くなっていきました。
また、人生で最も多くの時間と労力を、お金を稼ぐためではなく、「本当に自分がやりたいこと」そして「社会の役に立つこと」を一番に使いたいとも考えるようになったんです。
とはいえ、私はそれまでエンジニア一筋でビジネスのことは全くの素人だったので、退職後すぐにビジネススクールに通い、MBAを取得しました。
その在学中に設立したのが、アヴァンダ株式会社です。ここではロシア向けの越境EC(通販)事業に取り組みました。きっかけは、友人を通じて得た「ロシアでは日本製品が人気だが、現地ではなかなか手に入らない」という情報でした。
現地にサーバーを立て、ネイティブのロシア語で丁寧に商品説明をしたECサイトを構築しました。扱っていたのは、日本製の化粧品やサプリメント、日本の伝統工芸品、あるいは個性のあるニッチな商品などです。
事業はある程度まで順調に成長していましたが、後発の競合が登場したことで状況が一変します。日本の楽天やYahoo!、Amazonで販売されている商品を自動翻訳で紹介し、送料と手数料だけを上乗せする形でほぼ日本と同価格で販売するサイトが登場したのです。私たちは丁寧に時間をかけて商品ページを作っていましたが、圧倒的な商品数と価格競争力の前に、やむなく撤退を決断しました。
その後まもなく、完全暗号技術の開発者の方をご紹介いただく機会がありました。私が技術に詳しいからということでお話をいただいたのですが、すぐにその技術に強く惹かれました。量子コンピュータの実用化が進むこれからの時代に、絶対に必要とされる技術であり、まさに私がソニーを辞めたときに思い描いていた「自分がやりたいこと」「社会の役に立つこと」に重なるものがあったんです。
現在は、一般社団法人情報セキュリティ研究所の事務局長として、衆議院会館での講演会の開催や会員管理など、研究所の活動をサポートしています。
また、サイファ・コア株式会社では執行役員として、秘匿通信メッセンジャーの製品化・営業活動や、助成金を活用したリスキリング研修の推進などにも取り組んでいます。

事業の拡大方法

完全暗号については、当初は一般社団法人情報セキュリティ研究所の活動として、技術そのものの紹介や普及啓発を中心に取り組んでいました。しかし現在では、サイファ・コア株式会社において、完全暗号を活用した商品やサービスの導入をビジネスとして本格的に推進しています。
完全暗号の活用が求められる分野は非常に多岐にわたります。国レベルでは、国会議員の方々を通じて日本政府や他国の政府機関への働きかけを進めており、つい先日にはバングラデシュ政府との間でMOU(覚書)を締結するなど、国際的な協力体制の構築も始まっています。
民間においては、証券会社などの金融機関に向けた展開として、NPO法人「金融IT協会(FITA)」にも加盟し、連携を深めながら事業拡大を進めています。
また、一般企業においてもセキュリティが不要な場面はほとんどなく、すべての業界にとって今後ますます必要とされる技術です。そのため、私たちとしては、情報発信のスピードと規模をさらに加速させ、多くの方々にこの技術の意義と価値を届けていきたいと考えています。

事業にかける想い

現在でも、情報漏洩やハッキングといった事件は、ほぼ毎日のように発生しています。もし今後、量子コンピュータが本格的に実用化されれば、現在広く使われている暗号技術は瞬時に解読されてしまいます。つまり、私たちの社会を支えている多くの仕組みが、暗号の前提が崩れることで機能しなくなるのです。
これは単に個人情報の漏洩といったレベルでは済まず、インターネットそのものが安全に使えなくなり、交通、物流、通信、エネルギーなどの社会インフラが一斉に停止してしまうような事態につながりかねません。
そうしたリスクが現実のものとなる前に、現在の暗号技術の限界を多くの人に知っていただき、完全暗号を用いた対策を早急に導入してもらいたい、それが私の強い想いです。

目標や夢

これは仕事というより完全にプライベートな話ですが、世界遺産が好きで、いつか世界中を旅して回るのが私の夢です。
20代の頃、新婚旅行で約2週間かけて南米を旅し、マチュピチュをはじめとするインカ帝国の遺跡を巡りました。実際にその場に立ってみると、何百年も前の人々がどのように暮らし、何を信じ、何を残そうとしたのかを肌で感じるような、不思議な感覚がありました。
特に印象的だったのは、古代の人々が太陽や星の動きを正確に把握し、それを建築や暦に取り入れていたことです。現代のような技術がなかった時代に、なぜそんな高度な知識や仕組みを持てたのか-その奥深さに驚きと感動を覚えました。単なる石の遺構ではなく、人の知恵や営みの積み重ねを感じられる場所だと思いました。
それ以来、海外旅行では自然と世界遺産を訪れるようになり、トルコ、カンボジア、ロシアなどもそれぞれに深い歴史と独自の文化があり、とても印象に残っています。
いつか世界一周旅行をしながら、世界各地の遺跡や文化遺産を巡り、人類の歩んできた歴史にじっくり触れてみたいと思っています。

座右の銘や好きな書籍など

私の好きな言葉は、福沢諭吉の『学問のすゝめ』にある「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」です。
この言葉は、すべての人は本来平等であり、財産や肩書、見た目といった表面的なもので人の価値が決まるのではなく、その人の考え方や行動こそが大切だということを教えてくれます。
私自身も、人と接するときは外見や立場にとらわれず、その人の中身を尊重したいと常に心がけています。そして、自分自身もまた、見た目や肩書きに頼らず、誠実な姿勢や考え方で信頼される人間でありたいと思っています。

他の経営者様へのメッセージ

量子コンピュータの実用化が目前に迫る今、情報セキュリティの在り方だけでなく、社会全体のインフラの構造そのものが大きく変わろうとしています。
私たちが取り組んでいる「完全暗号」の技術は、これからの時代に不可欠な新しい基盤技術であり、通信、金融、エネルギー、行政など、あらゆる分野において信頼性の根幹を支える可能性を秘めています。
この変革の流れに関心をお持ちの経営者の皆さま、ぜひ一度お声がけください。導入を検討されている方はもちろん、この技術の社会実装や普及に共に取り組んでくださるパートナーも歓迎いたします。
他にはない唯一無二の完全暗号技術を通じて、未来の安心・安全な社会インフラの礎をともに築いていければ幸いです。

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